なぜキャバ嬢が小学生女子の人気職業になるのか

至ってわかりやすいテーマだと思うが、私の身の回りではよく”現代の謎”あるいは”世の中の破綻を象徴するデキゴト”として語られることが多いので、一応考えをめぐらせて見ようかと思う。

まず、では、単刀直入に、なぜキャバ嬢が人気職種たりえたか、というナゾ?をわかりやすいポイントで解説。

・カワイイ
見た目がかわゆい。一目瞭然である。

・お金という”力”を持っている

ほかの職種で、若さと美貌を兼ね備えた状態で、自活・育児できる、またはそれを上回って男性と対等にわたりあえるほどの”お金”という力を持つ職業は、ほぼない。一番一般的でわかりやすい職業はキャバ嬢なのである。

おまけに世は不況で、まっとうな就職をしても、30台前半までのっからないと、軒並み”満足な”レベルまで稼ぐことはできない。(そうでない職業もたくさんある。お医者さんでさえそうなのである。)そうした20代の疲労感、貧乏くささが世の中に伝播したのである。小学生にもわかるはなしである。

一番活性化している市場はどこなのか、ということである。

そういう意味では、彼らの将来を選択する際における市場に対する嗅覚というのは至って正しい。
われわれの時代でさえ、そういったものは発揮することを要請されなかったために、全く無かった。
ソニーミュージックに勤めるのと、トヨタにいくのと、メリル・リンチに行くのは、かわらなかった。
(まあ、われわれの世代においては、大きな企業でもつぶれるので、どこにいってもつぶれるか否かは運試し。→ゆえに、諦めが肝心。というスピリットなので、チョット違うのであるが)

昔から言われる、女の子の3大憧れ職業というのは、看護師、フライトアテンダント、ケーキ屋さん、お花屋さん、といったところがわかりやすいだろうか。(うち2職種の名称が変わっているのが興味深い。看護婦、スチュアーデスだった)

しかしながら、看護師は世に言う医療崩壊で、過労気味の医師を下支えする非常にキツい職業である。かつて女性が公然と社会進出できる数少ない機会であった事から、伝説的にトップにランクインしていたものの、その仕事のハードさに加え、世の中でワークライフバランスというものが提唱されつつある中、医療現場は完全にそうした現代の職業倫理から取り残されつつある。(夜勤などで24時間体制を支えなくてはならない)おまけに病院には、カッコイイ男の子が骨折で、とか、薄幸の病弱な若者が。。。とかいうロマンスが描かれがちで在ったが、そうした設定そのものが非常に古臭く、乙女心をもはや刺激しない。のみならず、病院という受け皿には現在、暇をもてあました、あるいは家族がデイケアがわりにおしつけた大量の老人がおしよせ、老人ケアがかつての割合よりも非常に高くなってしまったことがさらなるロマンチックの低下を招いていると言えるのではないか。(昔は自宅で老衰で亡くなるケースが多かったように思うが、今は自宅で死を迎えることを忌み嫌う風向きが強い。あるいは、その死に際してなにをすべきかのノウハウが継承されておらず、それを病院に求める向きも多いのではないかと考えられる。具体的な数字はないが、病院で亡くなる老人がかなり増えているのではないかと思う。)

次に、フライトアテンダントである。
フライトアテンダントは、ちょうど私たちの上の世代が就職する際から、雇用凍結が継続されている。この市場は女性の比率が圧倒的に高く、仕事も細分化しやすい為、出産・育児後の職場復帰というお題目につけこんで、コストカットの面から、主に経験者を対象に、パートタイマー制を導入したのである。今でも新卒でスッチーになるのは非常に難しい。むしろ男性がきっちり英語を覚えて、欧米エアラインに応募するほうが合格率が高いのではないかとさえ思われる。というわけで、フライトアテンダントは、就職市場としては、自給自足的に閉鎖してしまった為に、そもそも選択肢にあらわれない。あらわれないことが正しい形とも言える。

花屋、ケーキ屋にいたっては、ただお花やらケーキやらを売っていてはまったく立ち行かない時代である。小売業にはなんでもアイデアの投入が必要とされており、ケーキ屋などについては海外から、もしくは海外で修行していたパティシエという黒船がやってきたことと、少し前までのプチ好景気に後押しされたブランド志向により、まったく違う土俵の人々と競争を強いられる事態となった。バレンタインチョコが一粒x十円だった時代が、わずか15年で300円以上に値上がりしているのである。(x十円のチョコは今年あたりから復活しそうな向きであるが)クリスマスケーキなども、毎年当日に駆け込みで売りさばく様子が痛々しい。ミスタードーナツのうらで、消費期限切れで大量に捨てられるドーナツを見たことがあるだろうか。それに対して社会はなんと言ったか。”浮浪者の人にあげればいいのに。”ミスタードーナツ営利団体であって、非営利団体ではない。浮浪者の人に上げるためにドーナツをつくっているわけではないのである。彼らに言わせれば、そんなこと言う前に、買え!!てなことである。お店は正常に売り上げを上げて利益を得ねばならない。そしてバイト代や給料を出さなくてはならない。
とにかくクリスピークリームドーナツは行列なのにミスタードナツの裏には消費期限切れのドーナツが山積みにされるのである。移ろいやすい消費者の心をつかみ続けるのは容易なことではない。そのお仕事はまったく単純ではないし、景気にあおられお給料はとても低く、伸びる店舗の営業時間につられて、労働時間は長くなる傾向にあるのである。そんな職業に夢を見出せるだろうか?小売業に夢を見出すのはもはやコンサルで小金を稼いだおっちゃんくらいのものである。センスのよい人であればそんなビジネスもあたるであろう。花屋であれば珍しい花を売る、コストをかけてもラッピングは高いものを使う。ケーキ屋であれば天然自然酵母やら、直輸入のカカオを使ったチョコレートなんちゃらという工夫が必要なのである。いま小売業に夢を見れるのはビジネスに長けた人であって、小学生女子ではない。そして店員の職業は苦しい家計をどうにかしなければならぬ主婦や派遣をやめたオネーちゃんが食い扶持を稼ぐためにありつく職なのである。

人々がせめて小学生女子にはホンワカとした夢をもってほしいというのはわかる。
そしてそれがキャバ嬢というのはいかにも見た目に惑わされているのではないかと馬鹿娘をいなすようにしかりたくなる気持ちもわかる。
しかしこのような状況をもってしても、こうした職業に夢を見よというのは無理があるのではないか。そして小学生女子はみなさんが考えるよりももっと賢いということではないか。幼稚園女子はいまだにお嫁さん!とかいってくれるが、なんだかそれも”今の時代は職がないから”とか、30代女性の必死な婚活、という世相を反映しているのではないかと恐くなってしまうのである。